お薬豆知識

薬剤師が服薬指導でストレスを抱えないために

薬剤師の重要な仕事である「服薬指導」ですが、患者に情報を提示してもらえず的確な服薬指導がなかなか出来ていないのが薬剤師の現状ではないでしょうか?
ここでは、患者に振り回されない服薬指導術を身に付けるヒントとその心構えをお教えします。

服薬指導実施の現状

薬剤師の行う服薬指導の目的は大きく分けてこの2つにあります。

  • 服薬する患者の危険性を最小限にするための医薬品の「安全の確保」
  • 効果を最大限に引き出すという医薬品の「有効性の確保」

薬剤師にとって、患者に薬物治療の必要性を理解してもらう事が大切であり、薬剤師の重要な役割である。

という事は既に十分理解されていると思います。

しかし、薬局における調剤の服薬指導では患者の情報が不明瞭である事が多く、本人に直接聞いたりコミュニケーションをとりながら次のような事項を把握していかなければわかりません。

  • 病名
  • 患者背景
  • 体質
  • 性格
  • 知識
  • 薬歴
  • 生活習慣

 

これらの事を限られた時間で確認できているでしょうか?
お薬手帳だけに頼っていませんか?

おそらく十分に出来てない事の方が多いと思います。
服薬指導に必要な情報を得るために、1人1人に向き合わなければと思っていても実際は思うようにいかない事の方が多いのではないでしょうか?

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患者とのコミュニケーションの難しさ

質問の仕方を間違えると、引き出したい情報とは別の方向へ話が進んでしまう場合もありますし、デリケートな薬に対して配慮の欠けた指導を行って患者さんを苛立たせてしまったりもあるのではないでしょうか?

また、患者の中には質問をしても答えてくれない方もいらっしゃると思います。

なぜでしょうか?

人と人とのコミュニケーションというのは本来難しいものですが、薬局にお薬をとりにくる患者には特に配慮が必要となります。
それを理解するためには下記のように患者の立場を考え、心情を汲み取る事が大切なのです。

薬局でお薬を受け取りに来た患者の心情

患者は1人1人がそれぞれ「病気」という悩みを抱えている。
本来、健康的な体であればお薬を飲まなくてもいいはずなのに病気のためにしぶしぶ病院や薬局へ足を運ばなくてはならない。
なりたくもない病気になり、そのために行きたくもない病院へ行くしかない。
病気で苦しんでる中、病院の診察で待たされたあげく薬局でもまた待たされる。
待たされたあげく、さっき病院で言った事と同じことを言わなければならない。
自分が弱っている理由やその内容というのは、ただでさえ人に話すのに抵抗がある
「人前で名前をフルネームで呼ばれたあげく、その場で自分の弱っている部分をペラペラ喋るのは恥ずかしくて出来ない

このような背景があるため、お薬を取りに来た患者が服薬指導時に苛立ちやすいのは無理もないのです。

円滑なコミュニケーションの基本は「相手の立場に立つ事」です。
このように患者の立場を考え心情を想像する事を心がければ、スムーズに服薬指導をするにはどうすればいいのか見えてきます。

そこで、患者の立場に立って行う服薬指導の例がこちらとなります

相手の立場に立った服薬指導の例

「顔色が悪いようですが・・病院までどのくらい歩いてこられましたか?医師にはなんと言われましたか?」

と患者の様子を伺いながらさりげなく患者の情報を伺う

「お待たせして申し訳ありません。待っている間に具合悪くなったりしていませんか?前回飲んだお薬で体調に変化があったりしていませんか?」

待たせた事にお詫びをし、その際の体調を気遣いながら服薬中のお薬の確認をする。

「○○さんは服用されているお薬が数種類ありますので、お薬について3分程お時間頂いて説明したいのですがよろしいでしょうか?」

服薬指導にかかる目安の時間を前もって伝える。

「夕方の帰宅ラッシュに重なって患者さんが増えてしまったようです。○○さんがもし時間に融通がきくのでしたら、○曜日の○時頃はすいていると思うのでお待ち頂く事も少ないと思います。」

時間に余裕のありそうな患者には込む時間を避けてもらうよう促す。

その他、個室スペースを設けたり、整理番号だけで呼んであげるなどの細かい配慮が必要です。
患者の目線に立ち、それを理解してあげる事が患者の気持ちを軟らかくし気持ちよく情報提供をしてもらえる事に繋がります。

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薬剤師が手放せない服薬指導ガイドブック

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服薬指導をアプリに手伝ってもらう

それでも患者1人1人に服薬指導として毎回病状を確認するのは大変ですよね。
また、患者自身が自分の事を管理できていない事も多いです。

そんな時は日頃から患者の傍でお薬の服用管理をしてくれて、

  • 日々の体調の様子を記録
  • 服用時間のお知らせ
  • 副作用症状記録
  • 服薬の履歴確認
  • 身体症状の記録
  • 薬剤師からのコメントをメモ

などが簡単にできたらいいと思いませんか?

そこで、スマートフォンでお薬の服薬を管理してくれるアプリがあります。
その名も「服薬Checker」といいます。

この「服薬Checker」を患者さんのスマホにダウンロードしてもらい処方薬を予め登録することで、患者さんに服薬時間をアラームおよび画面上のアイコンでお知らせしてくれます。

さらに、服薬により

  • かゆい
  • 尿が赤くなった
  • 頭が痛い

などの副作用が起きた場合に

  • 症状
  • 日付
  • 時間
  • タイミング

 

を入力できる「症状記録」の機能も備えており、患者さんの副作用シグナルの検出もサポートします。
服薬の履歴と身体症状の記録は、「服用チェック」画面で確認できます。

iPhone5Sアプリとの事で高齢の患者さんには使いこなせないかもしれませんが、iPhone5をお持ちの患者さんにはお勧めしてみるのも良いかもしれません。

「服薬Checker」
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患者と薬剤師の間の誤解を解く

患者と薬剤師には下記のような主張と立場がある事を意識する必要があります。

薬剤師

  • 患者の病名は知らない
  • 薬剤師には服薬指導の義務がある
  • 患者の生活習慣や体調を知りお薬の適正使用を判断しなければいけない

 

患者

  • 患者に情報提示の義務はない
  • 処方箋に病名などの記載があるだろう
  • 分からない事は薬剤師が医者に確認しておいてほしい
  • 医者でもない人間に詳しく話しても意味がない
  • オープンスペースでベラベラと自分の症状を話したくない

 

このような認識の食い違いがあります。

それは、患者にとって医療現場の体制など知るよしもないからです。

そのため、患者が知らないからこそ服薬指導に協力してもらえないという事態が起きるのです。
そしてもしも曖昧な服薬指導をした結果、健康被害がもたらされた時に一番困るのは患者である事を薬剤師は知っています。

しかし、本当に服薬指導を適切にするという義務を果たすのであればこのような食い違いを出来る限りなくさなければ一向に改善されません。

患者が知らない薬局の事情

例えば、以下の事を理解している患者はどれくらいいるでしょうか?

  • 病院と薬局は全く別の機関であり、カルテは共有ではない事
  • 処方せんには、薬の名前が書いてあるだけで、病名は書いていない事
  • 医師は診察して治療方針を決めるのが仕事であり、薬剤師は病名と薬があっているかを見るのが仕事である事
  • 医者は病気のプロであり、薬のプロではなく薬の知識は医者より薬剤師の方が上である事。
  • 処方せんのミスは実際にあること。そのために疑義照会という義務が薬剤師にある事。
  • 服薬指導は厚生労働省からの定めに従って行っているという事
  • 薬代の7割は国の税金で支払われており、国の定めには従わなければいけない事。
  • 必要な情報提示に協力してもらえない場合お薬を交付できない場合がある事
  • 服薬指導を拒否した記録は3年間残る
  • 服薬指導を拒否した際に服用した薬は、どんなひどい副作用が起きても死亡しても、本人責任が発生する事。

 

実際、このような事を理解している患者は少ないと思います。
基本的には「しぶしぶ」といった状態で薬剤師へお薬代を払ってお薬をもらっているのです。

患者は、薬剤師が患者のためを思って「服薬指導」をしているという事を知らないのです。
それは「医薬分業」という国の医療費削減の制度によってできた歪によってそのような認識の食い違いがあるのも理由のひとつです。

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